暖炉とマントルピースの歴史Ⅱ

暖炉とマントルピースの歴史Ⅱ

Ⅱ.建築、インテリア様式の発展の歴史と、マントルピース

ヨーロッパ、アメリカの暖炉、マントルピースは、建築様式、インテリア・家具様式、美術様式と同様に地域、年代によって変遷してきました。とりわけ、英国の貴族が作ったカントリーハウスでは年代順、様式別に様々な暖炉、マントルピースを見ることが出来ます。この区分はいろいろな見解があると思いますが、弊社サイトではここ日本からみた、あくまでも大きな捉えかたで紹介します。

1、 ゴシック様式(12~15世紀)
ゴシック様式は東洋(イスラム文化を中心とした東洋)と西洋文化の融合の中から生まれました。各地の大聖堂(ノートルダム、ミラノ、ケルン、ウエストミンスター、セビリア)がこの様式で建てられました。

この時代のマントルピースはあまり見ることができませんがこの様式をモチーフとした、マントルピースが最近作られる例もあります。(ネオ・クラシックと呼ばれる中に含まれることもあります。)非常に堅牢なつくりで大きな開口部をもつデザインがみられますが、文様はアラベスク、渦巻き、唐草、火炎模様など細かな文様が多くみられます。素材は砂岩、ライムストーン、ベージュ系の大理石などです。

2、ルネッサンス様式(チューダー・ジャコビアン)(15~16世紀)
ルネッサンス(再生)はイタリアで資本家が徐々に台頭することによって起こりました。それまでの中世の国王、教会の抑圧された支配体制の中から、人間本来の自由や豊かさを求める市民の運動です。

この時期の権力者の豪華な室内には必ず暖炉が設けられてマントルピースが室内装飾の中心になり、多くの人を惹きつける存在になりました。この頃の建築、インテリアのデザインの特徴は、古代ローマの様式を用いました。オーナメント(装飾)のモチーフはアカンサスの葉、葡萄、パピルス、ライオン、馬、羊、牛、そして人間等の彫刻、マントルピースの装飾もそれに準じて作られました。その後この思想がヨーロッパ各地に伝わっていきました。

Longleat House

3、バロック様式(17~18世紀初期)
バロックはルネッサンスの後、ローマから各地に広がりました。全盛期はフランスのルイ14世、ベルサイユ宮殿が象徴的です。ルネッサンスを基調に、より奔放で豪華絢爛な表現で建築、インテリアデザインに用いられました。

弊社サイトではこの時期からの特徴をマントルピースのデザインの中に取り入れています。モチーフにはライオンの頭と足、羊の頭と角、アカンサスの葉、花、貝などを大胆により深く彫刻されました。

(写真 : Longleat House )



The Fireplace Book French1

4、フレンチ・クラシック様式(ロココ、18世紀)
バロックの後のロココ様式を弊社ではフレンチ・クラシックと呼ぶことにしました。バロックよりは軽く、女性的な曲線の多いデザイン、婦人を中心とした社交界の華やかで軽快な優雅さを持った様式で、インテリアが建築様式より先行したそうです。オーナメントのモチーフは猫足、貝やアカンサス、渦巻き、婦人像などがあります。

(写真 : The Fireplace Book )


Mantel of The hall at Clandon1

5、ネオ・クラシック様式(アダム、フェデラル、18~19世紀初期)
18世紀後半からローマで始まったローマ時代の古代に帰れという芸術運動をネオ・クラシシズム(新古典主義)といいます。いままでの曲線を多用したスタイルから直線的で厳格、稟とした風格と優雅さを持った様式です。オーナメントのモチーフは円柱、胡麻殻抉(ごまがらじゃくり=柱などの表面に、縦に並べて彫りつけた溝)アカンサス、花輪、花瓶、月桂樹、楽器等が用いられました。

マントルピースも同様に各モチーフを品よく配しバランスよく使われました。

(写真 : The hall at Clandon / the history of english interiors / alan & ann gore )


Victorian1

6、19世紀の様式1
フランスは革命後、ナポレオンの時代からのアンピール様式や、ナポレオン3世様式などをめぐりまた、イギリスはリージェンシー様式からヴィクトリア様式まで移行します。

インテリアは貴族から庶民に、職人の手仕事から機械生産の時代に変わっていきました。デザインは各時代の様式が次々に流行し、後半はそれがひとつの製品に同時に使われるようになるフリールネッサンスと呼ばれる様式が生まれるまでになりました。したがって弊社ではこの時代のデザインを特に取り上げることはしていません。

(写真 : Fire Places. /Jane Gitlin. )


7、19世紀の様式2
17世紀から貴族の高価な家具とは別に、農民や庶民のための質素でも実用的なインテリア、家具の系統(ウィンザーチェアー、アメリカ・コロニアル様式、シェイカー様式など)が出てきました。それらが19世紀後半になるとアーツアンドクラフツの運動に流れていきます。
この運動は装飾より機能美が尊重されるきっかけとなりその後のデザインに大きな影響を与えました。


アールデコ1

8、アールヌーヴォー様式(19世紀末~20世紀初期)
アーツアンドクラフツの流れから装飾の全ては植物の世界より成り立つという考え方から、アールヌボー(新芸術)の様式が発展しました。花、葉、枝、蔦などを使って直線を排して曲線を多用し自然で繊細なイメージを提示しました。

9、アールデコ様式(20世紀初期)
アールヌーボーの後フランスを中心にアールデコが起こります。アールデコはアールヌーボーの曲線を中心としたものを否定して直線、円を主体とした幾何学的な図案を多用しました。

(写真 : Fireplaces./Encarna Castillo. )


10、モダン様式(20世紀中期)
鉄、ガラス、コンクリートなどの工業材を使い機械生産が高度化しよりシンプルで直線、幾何学的なデザインです。ドイツのバウハウス(建築、芸術学校)から起こり世界中に広がりました。
弊社のマントルピースのデザインもシンプルで直線的なもの、素材感を重視したものをいれました。

11、コンテンポラリークラッシク様式
ここでは現在欧米で盛んに作られている、既存のクラッシクスタイルが始まる前の様式や、デフォルメされたオーナメントのイメージを用いたもの、素材感強調したもの、架空の過去のイメージから起こされたデザイン等を提案しています。

(出典:図でみる洋家具の歴史と様式/中村幸雄著、ヨーロッパの文様辞典/視覚デザイン研究所
The Elements of Style/Alan Powers)