暖炉とマントルピースの歴史Ⅰ

暖炉とマントルピースの歴史Ⅰ(暖炉、マントルピースはなぜ魅了するのか)

Ⅰ. 暖炉、マントルピースの出現(マントルピースが人を惹きつけるわけ)

炎のイメージ1

1、火の発見と入手
人間にとって火は太古から畏怖の対象でした。雷や山火事、火山の噴火などどれもが災いに満ちた恐ろしいものでした。火は荒ぶる神の仕業、人智の及ばない者の所業だと考えられていました。

しかし、こわごわ火に近づくことが出来るようになると、暖かさや、明るさ、輝きに魅了させられるようになりました。揺れ動く炎を見ていると誰もが心を開き素直な気持ちになる。そんな火を長い時間かけて知り、自分の手に納め(これが出来る者は統率者や権力者になった時代もあります。)また家の中に持ち込みました。

家の中に持ち込むことによって暖を取り、明かりをとり煮炊きができるようになり、また宗教的な行事や祝祭のためにも使われるようになりました。

囲炉裏イメージ1

2、火を家の中に
日本における古代の住まい、竪穴式住居でもそうですが、もともと(火床)を居室の床の中央部分に穴を掘って、暖房や煮炊きに使いはじめました。

そして、時代は下って建築材料、煙突の発達や改良で、(火床)を壁の方に移動して、今日よく見る暖炉の形になってきました。

初期は暖を取るためと料理目的での使われ方をしてきましたが、料理は専用のキッチンが整備されるようになると、暖炉は暖房のためと新たに装飾の目的に改造されて冠婚葬祭の中心にもなってきました。

3、暖炉とマントルピース

暖炉を壁面にあるいは、壁の外に移動できるようになりますと、暖炉の周りを飾る習慣が出てきました。
暖炉設備で火を燃やす所、暖炉をファイヤープレイス(Fireplace)と呼ばれ、また暖炉の周りを飾る装飾用の飾り棚のことをマントルピース(Mantelpiece)といわれています。

暖炉は部屋を暖めるための物ですから、暖炉の前が屋敷の中で一番居心地のいい所です。家族、親族の団欒の中心で、お客様を招く時も勿論暖炉の前に招き、炎を見ながらご馳走と美酒で旅を労い外の世界の話を聞きました。

このように暖炉の機能の進化とともにマントルピースはこの暖炉を飾る目的のためにデザイン、素材とともに変化してきました。客間のマントルピースは冠婚葬祭、接客の中心ですから、装飾のため、威厳を示すため周辺の装飾も含めだんだんと豪華に厳で、芸術的になっていきました。

日本の住宅の中で例えると暖炉は囲炉裏(いろり)で、マントルピースは床の間と仏壇を合わせたようなものだと考えられます。

(出典:火の起源の神話/J.G.フレイザー、The fireplace book/Miranda Innes)